NGP協同組合では、2023年4月27・28日の2日間、香川県豊島にて環境保全・再生活動を行いました。
豊島では、去る3月31日に「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(産廃特措法/不法投棄事件に関する国の財政支援措置を規定した法律)」の期限を迎えました。
汚染された地下水の水質が、浄化作業により2021年度にようやく「排出基準(※1)」に到達しましたが、不法投棄が始まってから約40年、産廃の処理開始から約20年の歳月が経過しています。地下水の「環境基準(※2)」への到達にはさらに10年以上かかると推計されています。
「第13回 NGP香川県豊島 環境保全・再生活動」を行いました
~岡山大学との第4回目の産学連携による植生回復活動~
2023年4月27日・28日
不法投棄された産業廃棄物が残っている状態(1991年)
産業廃棄物は撤去されたが、水質汚染が著しい状態(2017年)
現在
この大きな節目となるタイミングで、豊島を元の豊かな島に戻すという強い決意を込めて、NGPは第13回目となる今回の活動を行いました。
豊島事件は本当の意味ではまだ終わっておらず、NGPは今後も本当の意味で豊島が再生するまで、活動を継続していきます。
また今回は、SDGsの取り組みを波及させ、持続可能な社会の実現に向けて組合内に活動の輪を広げることを目的として、組合員会社の従業員に幅広く活動募集を行いました。
これまで、定期的に活動報告を行い、組織としての取り組みの意義、目的を伝えていたため、今回は過去最多の組合員13社、総勢28名が参加しました。
今回は、「岡山大学との産学連携による植生回復活動」「柚の浜荒廃地の整備」「柚の浜オリーブ植樹場所での活動」「海岸漂着ゴミ回収活動」「不法投棄現場見学」を主な活動として行いました。
前回と同様に新型コロナウイルス感染防止の観点から、事前に抗原検査を行い、豊島への定期船は使用せず、チャーター船を利用するなど、可能な限り豊島住民と接触をしないよう配慮することに重きを置き、ボランティア活動を実施しました。
活動場所の位置図
●岡山大学との産学連携による植生回復活動
今回は、岡山大学が豊島の植生回復研究をしている区画において、研究対象となる環境再生のために植栽した植物の成長を阻害する雑草の除去作業を行いました。豊島に元々自生している「ヌルデ」や「アカメガシワ」など実生の木もあるため、すべて手作業で行いました。今回の場所は毎年行っているツツジの植樹場所としても活用していく予定です。
嶋教授から作業説明を受ける様子
雑草の除去作業の様子
雑草の除去作業の様子
雑草の除去作業の様子
また、今年2月末に豊島小中学校によるツツジの植樹式(※3)が行われた場所において、ツツジの成長を阻害する雑草の除去を行いました。ツツジの周囲約1メートルを対象範囲として35か所、実生の木を見極めながら全て手作業で行いました。
嶋先生は「鳥が種を運んで来て、色々な植物が広がり、ここの条件に合った植物だけが残る。それが自然です。私たちができることは雑草を刈り、小さい実生が自力で大きくなる環境を作ってあげるだけです。ツツジだけは種が小さく成長が非常に遅いので、ここで種を取って私たちが2年育てて、豊島の子どもたちが1年育てて植樹をしています。高校に通うために島を出る子どもたちが豊島に帰ってきた時に、ツツジを植えた思い出が残せればいいなという想いで続けています。」と語られ、元の植生に戻す大変さと、「豊島の子どもたちにできること」のお手伝いをさせていただいたと実感することができました。
【ツツジの植栽地】雑草の除去の様子
【ツツジの植栽地】雑草の除去の様子
【ツツジの植栽地】雑草の除去の様子
【ツツジの植栽地】雑草の除去の様子
【ツツジの植栽地】作業前
【ツツジの植栽地】作業後
●柚の浜荒廃地の整備
2022年3月、2019年の活動開始当初より整備作業に取り組んできた「柚の浜」荒廃地の整備後の土地の有効利用としてオリーブの木を植樹しましたが、オリーブを植樹した場所の西側に隣接する場所は依然として荒廃地となっていたため、枯れ松や木の根、雑草の除去を行いました。作業前と作業後では景色が変わり、元々あった小川の流れもスムーズになり、元の景色の面影を感じることができました。
枯れ松や木の根、雑草の除去作業の様子
枯れ松や木の根、雑草の除去作業の様子
枯れ松や木の根、雑草の除去作業の様子
枯れ松や木の根、雑草の除去作業の様子
作業前
作業後
作業前
作業後
●「柚の浜」オリーブ植樹場所での活動
2022年3月に植樹したオリーブの木の成長を阻害する雑草の除去を行いました。
オリーブの木はつぼみを付けており、5月から6月にかけて花が咲きます。
秋に収穫ができる日を楽しみに、今後も成長を見守りたいと思います。
除草作業の様子
除草作業の様子
オリーブの花のつぼみについて説明を受ける様子
オリーブの花のつぼみの様子
作業前
作業後
●海岸漂着ゴミ回収活動
今回は、「柚の浜」においてゴミの回収活動行いました。
ペットボトルや、発砲スチロールなどのプラスチックゴミが多く、ブイなどの漁業ゴミや不法投棄されたタイヤなどもあり、豊島を含む瀬戸内海の生態系を守るため、入念に回収活動を行いました。
ゴミの様子
ゴミ回収活動の様子
ゴミ回収活動の様子
ゴミ回収活動の様子
●不法投棄現場見学
今回は、初参加のメンバーも11名と過去2番目に多く、「豊島事件」※2と活動の意義について正しく理解してもらうため、座学を実施しました。
NGP事務局よりNGPのこれまでの活動と意義、今後の活動に対する決意について、想いを再共有した後、実際に不法投棄現場と「豊島のこころ資料館」の見学を行い、廃棄物対策豊島住民会議の石井さんより「豊島事件」の歴史と不法投棄現場の現況について分かりやすい説明と写真を交えながら学びました。
座学で活動の意義について学ぶ様子
【豊島のこころ資料館】豊島事件の闘いの歴史について学ぶ様子
【豊島のこころ資料館】豊島事件の闘いの歴史について学ぶ様子
【不法投棄現場】実際に現場を見学しながら現況について学ぶ様子
今回は2日間天気にも恵まれ、作業に適した気温の中で気持ちよく活動を行うことができました。
NGPは今後も瀬戸内オリーブ基金(※4)と協力して、「豊島事件」(※5)の悲劇を二度と繰り返さないために環境保全・再生活動に取り組んでまいります。
※1「排水基準」
工場排水を川や海に流してもよいとされる基準
※2「環境基準」
人の健康を保護し、生活環境を保全するうえで維持することが望ましいとされる基準
※3 植生回復活動の一環として、豊島小・中学校と共同で、コバノミツバツツジの種から育成した苗木を不法投棄現場に植樹して育てる活動を行っており、2021年にはNGPも参加し、豊島小・中学校、岡山大学、瀬戸内オリーブ基金と共同で植樹式を行った。(https://www.ngp.gr.jp/topics/topics_71.php)
※4「瀬戸内オリーブ基金」
自動車リサイクル制定の契機ともなった不法投棄事件が起こった香川県豊島の環境保全・再生活動に取り組むNPO法人(http://www.olive-foundation.org/)
※5「豊島事件」
1970年代後半から1990年にかけて、約90万トンの産業廃棄物が香川県豊島に不法投棄された、国内では戦後最大級といわれる不法投棄事件。不法投棄された産業廃棄物の中で、使用済自動車から発生するシュレッダーダストが最も多く、自動車リサイクル法制定のきっかけの1つとなった。