NGP協同組合では、2022年5月19・20日の2日間、香川県豊島にて環境保全・再生活動を行いました。
今回から初めての取組として、岡山大学大学院環境生命科学研究科の嶋一徹教授が研究している豊島の植生回復活動に産学連携による活動を開始しました。岡山大学が不法投棄によって破壊された植生の調査、研究を行い、長年取り組んできた、原状回復させるために行ってきた活動に、産学連携でNGPが関与できることになったことで、NGPの豊島活動のゴールである不法投棄現場の国立公園をふさわしい姿へ原状回復させるために、学術的に意義のある活動ができることになります。
また、第9回目となる今回は、組織として初めて組合員会社の従業員にまで活動募集を行いました。SDGsの取り組みを波及し、持続可能な社会の実現に向けて、組合内に活動の輪を広げることを目的としています。これまで、定期的に活動報告を行い、組織としての取り組みの意義、目的を伝えていたため、今回は過去最多の総勢11社23名が参加しました。
今回は、「岡山大学との産学連携による植生回復活動」「初参加者の産業廃棄物不法投棄現場の見学」「柚の浜オリーブ植樹場所の手入れ」「海岸漂着ゴミ回収活動」を、主な活動として行いました。
また、前回と同様に新型コロナウイルス感染防止の観点から、事前に抗原検査を行い、豊島への定期船は使用せず、チャーター船の利用など、可能な限り豊島住民と接触をしないよう配慮することに重きを置き、ボランティア活動を実施しました。
●岡山大学との産学連携による植生回復活動をスタート
嶋教授は、2015年1月に廃棄物対策豊島住民会議の安岐正三事務局長から相談を受けたのをきっかけに、不法投棄現場周辺の植生を調査しました。
調査の結果、かつてはコバノミツバツツジやナツハゼなど約18種類ほどの植物が生えていましたが、不法投棄によって植生が破壊され、半分以下に減ってしまったことが判明。安岐事務局長より、不法投棄現場に元の豊かな自然が戻るまで産廃問題が終わらないこと、自然の力を使って植生が回復する手法を示してほしいことなどの強い想いを受け、2015年4月より調査研究と植生回復活動に取り組んできました。
岡山大学大学院
環境生命科学研究科 嶋一徹教授
岡山大学とは、2月に行われたコバノミツバツツジの植樹式※1など、以前から交流がありましたが、目指す姿、想いがNGPと同じであるということや、活動を進めていく上で岡山大学側の人の手が全く足りていない状況を聞き、豊島の植生回復の手助けができるならばと産学連携による活動をこの度スタートしました。
今回NGPが岡山大学と連携して作業を行った場所は、不法投棄現場の見学に利用するために瀬戸内オリーブ基金※2が設置した見学道の階段の脇です。ここは、岡山大学の主な植生回復活動の現場であり、この場所で活動を行うことにより、不法投棄現場の見学だけではなく、環境教育を行うことを目的とした場所です。
見学道の植栽地は、不法投棄の影響で植生が崩壊し地面が露出した状態であったため、斜面の崩落を防ぐ目的で植えられた外来種のコマツナギが繁殖。不法投棄が行われる前の植生とは異なる状態になっており、僅か数種類の植物しか生育しておらず多様性が極めて乏しいのが現状です。
「見た目は緑が回復しても豊かさは回復できていません」と嶋教授は語ります。
そこで、本来自生していた多様な植物を、島内で採取した種子から育苗して植栽しています。
見学道の植栽地で植栽している植物
- シャリンバイ
- イヌザンショウ
- クスノキ
- イヌビワ
- アカメガシワ
- トベラ
- ヒサカキ
- コバノミツバツツジ
- タラノキ
【見学道の植栽地】植栽された植物のネームプレート
NGPとしては、今回初めてこの活動に参加し、嶋教授と土壌環境管理学研究室の学生たちによるレクチャーを受けながら、植生された植物の成長を阻害する雑草・外来植物の除去、しがら柵の補修、樹木への名札付け、雑草繁茂抑制と土壌乾燥を防ぐための堆肥の敷設を行いました。
作業の説明をする嶋教授
嶋教授(後列右から3人目)と学生たち(前列3人)、NGPボランティア
作業前
作業後
また、今年2月に豊島小・中学校、岡山大学、瀬戸内オリーブ基金と合同で植樹※1した、コバノミツバツツジの植栽地では、成長を阻害する雑草の除去と植栽地の脇の水路の側壁崩壊を防ぐための土嚢の設置を行いました。
【コバノミツバツツジの植栽地】雑草の除去作業の様子
作業前
作業後
【コバノミツバツツジの植栽地】土嚢の設置作業の様子
●産業廃棄物不法投棄現場の見学
今回は、活動募集の範囲を組合員の従業員にまで広げたということもあり初参加のメンバーも12名と過去最多となりました。「豊島事件」※2と活動の意義について正しく理解してもらうため、座学を実施しました。
廃棄物対策豊島住民会議の安岐事務局長より「豊島事件」の歴史と不法投棄現場の現況について写真を交えながら学ぶとともに、NGP事務局の鈴木専務理事よりNGPのこれまでの活動と意義、今後の活動に対する決意について、想いを再共有した後、実際に不法投棄現場と「豊島のこころ資料館」の見学を行いました。
豊島事件の歴史を語る安岐事務局長
座学で豊島事件について学ぶ様子
【豊島のこころ資料館】豊島事件の闘いの歴史について学ぶ様子
【豊島のこころ資料館】産廃(シュレッダーダスト)の剥ぎ取り壁面の前で説明を受ける様子
初参加のメンバーは、実際に現場で生の情報に触れることで、豊島事件の重大さと一度壊された環境の再生がどれだけ大変かを肌で感じ、この活動の重要性を認識していました。
●「柚の浜」オリーブ植樹場所での活動
2022年3月、2019年の活動開始当初より整備作業に取り組んできた「柚の浜」荒廃地の整備後の土地の有効利用としてオリーブの木を植樹しました。
整備前
整備後
オリーブの木は香川県の県木で、平和の象徴であるとともに、豊島事件の公害調停成立の際の記念樹でもあるオリーブの木を植樹して育てることで、平和の輪を広げ、次の世代へ美しい豊島、地球を残したいとの想いが込められています。
この植樹したオリーブの木を乾燥から守り、土壌を改良するために堆肥と水を撒く作業を行いました。
【「柚の浜」オリーブ植樹場所】堆肥を敷設する様子
【「柚の浜」オリーブ植樹場所】水を撒く様子
また、オリーブを植樹して新しいスタートを切った記念に石碑を設置しました。
豊島では、先人から受け継いだ豊かで美しいふるさとを取り戻すという強い思いのもと、25年に渡る公害調停を闘い抜いた歴史があります。NGPもそんな豊島のこころを忘れてはいけない、豊島を元の豊かな島に戻すという強い決意を、この柚の浜のオリーブ植樹場所に託すため、
「忘れない 豊島のこころ 豊かな自然 豊かな島へ」というメッセージを石碑に刻みました。
●海岸漂着ゴミ回収活動
瀬戸内海の海ゴミ問題は深刻であり、豊島も同様に海ゴミの漂着先になっていることから、きれいな島を守るためにペットボトルやブイなどの漁業ゴミ、プラスチック類などの海岸漂着ゴミの回収活動を行っています。
今回は、①「水ヶ浦」(産業廃棄物不法投棄現場近く)と②「横引ヶ浜(豊島のこころ資料館の脇)で、今回2か所とも初めてゴミの回収活動行う場所です。
手つかずの場所であったためゴミが多く、ペットボトルや、発砲スチロールなどのプラスチックゴミがほとんどです。豊島を含む瀬戸内海の生態系を守るため、入念に回収活動を行いました。
「水ヶ浦」は、陸路ではつながっていないため船で向かいます。
回収したゴミを船で運搬
港へごみを引上げ
横引ヶ浜は豊島のこころ資料館の脇から陸路で行くことができる場所ですが、こちらも初めて活動を行う場所ということもあり多くのゴミを回収しました。
最後に2カ所に分かれていたごみをまとめ、回収したごみの計量を行いました。
回収したごみの計量
集合写真を撮り作業完了
詳しくはこちら(https://www.ngp.gr.jp/sdgs/teshima/)
NGPでは、今後もオリーブ基金と協力して、「豊島事件」の悲劇を二度と繰り返さないために環境保全・再生活動に取り組んでまいります。
※1 植生回復活動の一環として、豊島小・中学校と共同で、コバノミツバツツジの種から育成した苗木を不法投棄現場に植樹して育てる活動を行っており、NGPは2021年2月、豊島小・中学校、岡山大学、瀬戸内オリーブ基金と共同で植樹式を行った。(https://www.ngp.gr.jp/topics/topics_71.php)
※2 「瀬戸内オリーブ基金」
自動車リサイクル制定の契機ともなった不法投棄事件が起こった香川県豊島の環境保全・再生活動に取り組むNPO法人(http://www.olive-foundation.org/)
※3 「豊島事件」
1970年代後半から1990年にかけて、約90万トンの産業廃棄物が香川県豊島に不法投棄された、国内では戦後最大級といわれる不法投棄事件。不法投棄された産業廃棄物の中で、使用済自動車から発生するシュレッダーダストが最も多く、自動車リサイクル法制定のきっかけの1つとなった。
※4 「柚の浜」オリーブ植樹
2022年3月、2019年の活動開始当初より整備作業に取り組んできた「柚の浜」荒廃地の整備後の土地の有効利用としてオリーブの木を植樹しました。オリーブの木は香川県の県木で、平和の象徴であるとともに、豊島事件の公害調停成立の際の記念樹でもあるオリーブの木を植樹して育てることで、平和の輪を広げ、次の世代へ美しい豊島、地球を残したいとの想いが込められています。(詳しくはこちら)